ACTION

電光石火

クリエイティブな思考を必要とする際に、迷ったりや集中力が続かなかったり、構造化されていない無駄な議論を延々と続けるという罠に陥りやすいという問題があります。
効果的な解決策として、構造化されていない議論を明確なプロセスに置き換えましょう。
集団での意思決定、問題解決、課題検討を行う必要がある際にこのエクササイズは効果的です。

  • 所要時間

    30〜120分

  • 参加人数

    2〜10名

  • 提供レベル

  • 心理的安全性

    ミドルゾーン

  • 用意するもの

    長方形の付箋、正方形の付箋1色、投票用のドットシール2色、シャーピー2色/マーカー、残り時間を示す用のタイマー、集中できるBGMプレイリスト

進め方

  1. Step 1

    事前タスク: ファシリテーターを選択する
    チーム内でファシリテーター役を選びます。ファシリテーターもセッションに参加できますが、ステップの進行や時間を意識する必要があります。

    問題から始める ー7分
    その週に起こった課題、迷惑だった事、ミスや懸念事項を7分間で全て書き出します。
    「プロジェクトが進んでいない気がする」「私のプロジェクトよりプロジェクトXの方が注目されている気がする」等、障害と感じるものは何でもです。
  2. Step 2

    現在の課題 ー各4分
    ファシリテーターは1人ずつ指名し、壁もしくはホワイトボードの前に立ってもらいます。指名された人は、それぞれの付箋を簡潔に説明しながら貼り付けます。このとき、他の人は発言しないようにしましょう。ファシリテーターは1人あたり4分計ります。
  3. Step 3

    解決すべき課題を選択する ー6分
    ファシリテーターは全員に2つの投票用ドットシールを配ります。(投票主義(https://hij-toolbox.tds-g.biz/tool/dotmocracy/))
    最も解決すべきであると思う課題に、まわりと相談せず各自で投票します。

    投票は自分の付箋にもでき、思い入れが強ければ1つの課題に2票入れる事も可能です。

    6分経過したら、得票数が多い課題を抜き出し、優先順位の高い順に並べるようグループに指示します。

    投票されなかった残りの課題はどうするのか? …これについては後述します。
  4. Step 4

    課題をHMWの質問として捉え直す ー6分
    課題を「How Might We構文(https://hij-toolbox.tds-g.biz/tool/how-might-we-questions/)」に置き換えます。

    ここでは、得票数が多く優先順位が付けられた課題にのみ焦点を当て、各課題をHow Might Weの質問として書き直すよう指示します。これが解決策を生み出すために役立ちます。

    例:得票数が多い付箋が「プロジェクトXで何が起こっているのか分からない。」だった場合。
    多くの人が投票している事から、明らかに多くの人が抱えている問題である事がわかります。“How Might We” 構文を使って問題にアプローチすることによって、課題を解決可能なものとして認識できるようにします。
    「私達はプロジェクトXのプロセスの中で現在起きていることを、どのように把握することができるだろうか?」

    ファシリテーターは、全ての課題を素早く書き直し、優先順位が変わっていない事を確認してから次に進みましょう。
  5. Step 5

    ソリューションを生み出す ー7分
    How Might We構文に置き換えた課題に対し、解決方法を考えます。
    7分間でHow Might Weに対して可能な限り多くのソリューションを議論なしで書き出します。後で整理できるので、ここでは質より量を目指しましょう。

    ソリューションを書いたら、声に出して読み上げ、素早く「表面(ホワイトボード、フリップチャート、厚紙)」に貼り付けます。
    声に出す事で、お互いのアイデアを認知する事ができ、グループ内の共有をサポートします。ディスカッションはせず、ただアイデアを声に出し、聞き続け、そして書きます。
  6. Step 6

    ソリューションに投票する ー5分
    3つの投票用ドットシールを使い、How Might Weを解決するのに最適だと思うソリューションに投票します。
  7. Step 7

    ソリューションの優先順位付け ー30秒
    30秒以内でソリューションの優先順位を付けたリストを作成します。
  8. Step 8

    何を実行するかを決める ー5分
    どのソリューションを実行すべきかが明らかになりましたが、実行するためにどれだけの労力が必要かを把握する事が重要です。そこで、簡単な労力/影響度を視覚化したうえで、どのソリューションを早急に試すべきか、またどれをToDoリストなどに追加すべきか、または残タスクとして置いておくかなど、任意の管理方法を持って残し方を決めていきます。

    このステップはファシリテーターが議論を推進しなければならないため、積極的に関与する必要があります。
    まず各ソリューションを 1 つずつ取り上げ、労力/影響スケールに追加します。この場合の「労力」とは、チームとして実行する際にどれだけ労力がかかるかを表し、「影響」は問題を解決する度合いを表します。

    ファシリテーターへの指示:得票数が最も多かったソリューションを選び、労力/影響スケールにおいて中心より「より高いか、より低いか」を尋ねます。このとき、議論が脱線しがちなので、ファシリテーターは議論が20秒以上にならないよう注意してください。
    「労力」の度合いが決まったら、同じ方法で「影響」も高いか低いかを決めます。

    これで、効果のあるソリューションの優先度が明確になりました。(左上の緑色部分)また、影響の大きいソリューションにはより多くの労力が必要になります。 (右上部分)
    ファシリテーターは、緑色部分にある全ての付箋に、後で識別できるように対照的な色のドットシールで印をつけましょう。
  9. Step 9

    ソリューションを実行可能なタスクにする ー5分
    ファシリテーターは、緑色部分に置かれたソリューションを取り出し、そのソリューションを書いた人に対して、1〜2週間で実行できるステップは何か尋ねます。

    全てのソリューションを終えたら、チームはタスクが実行可能になります。(チームがどのようにタスク管理を行うかについてはまた別の機会に説明します)
    緑色部分以外に置かれたソリューションについては、影響のあるソリューションを全て付箋にまとめ、忘れないように「To Do」や「残タスク」に追加します。
    緑色部分のアクションが実際に問題を解決する事になり、より労力のかかるソリューションが時代遅れになる事を体感するかもしれません。
  10. Step 10

    仕組みと規律が自由を生む
    ここまでくると、短時間のうちに重要な課題を定義し、解決策を生み出し、何を実行するかの優先順位を、ほとんど議論する事なく決定できたと認識できるでしょう。

    新製品の機能設計やイベントの企画、オフィススペースの改善など、様々な活動において延々と続く議論を削ぎ落とすという良い原則になっています。
    前にも述べた通り、クリエイティブな問題解決はデザインの核心です。そのため、敬意を払い、やる気をなくさせる無駄を省き、疲弊するような議論は切り捨てましょう。

    よくある質問
    Q. 採用されなかったアイデアはどうなりますか?投票されなくても素晴らしいアイデアがあったらどうしたら良いですか?

    A. 良いアイデアかどうかが重要なのではなく、実行してテストする事が重要なのです。ですから、たとえくだらないアイデアが投票で選ばれて実行されたとしても、そこから学び、前進しましょう。クライアントの中には、ここで生まれたアイデアを全て文書化したがる人もいますが、そのような事をしないように働きかけましょう。
    このように、問題に対するソリューションを生み出すシステムがあれば「良い」ソリューションに囚われる必要はありません。 つまり「捨てなさい」という事です。

    Q. 投票システムは最も重要な事を決定する方法として欠陥があるのでは?委員会設計のようなものではないのですか?

    A.もちろん完璧なシステムではありませんが、最も声が大きく、しつこい人に譲歩し、聞いているだけのような会話が続き、なかなか実行されないよりはましです。システムの欠点を探すのは実行を先延ばしにするだけですので、判断する前に試してみてください。

    Q. この方法はデザイン要素があるもののみに有効なのでしょうか?

    A. いいえ、他にも様々な事に有効です。例えば、社員旅行計画、オフィス環境の改善 、マーケティング/意識改革(“インフルエンサー”とどう接するか)、セールス(顧客獲得数をどう増やすか)等です。

*Jonathan Courtney, AJ & Smart Berlin作成のツールを適応(https://ajsmart.com/)日本語訳:Hyper Island Japan Team